Lock DanceとはLock(鍵)の意味で、動きの一つ一つに鍵をかけるようにカチッと止まる動きが特徴的なダンスです。
よく音楽のRockと間違われますが、関連性は無く別物です。
Lock Danceのイメージが沸かない人は、元SMAPの中居くんが踊っていたダンスとか、最近ではAKB48の根も葉もRumorのダンス言えばピンとくる方も多いかもしれません。あとはDA PUMPのKENZOさんが踊っていたり、嵐の『A・RA・SHI』の振り付けにも登場しますね。
Lock Danceはストリートダンスのジャンルの1つで、1960年代のアメリカで生まれました。
古い年代に生まれたことからOld Schoolと呼ばれ、ロボットのようなPop Dance、アクロバティックでクルクル回るBreak dance の3つがOld Schoolの代表格と言われています。
今回はLock Danceの解説と、その歴史について詳しく記載するよ!
Lock Dance(ロックダンス)とは?
Lock Danceは1960年代のアメリカのダンスチームThe Lockers が創った踊りで、身体を『カチッ』っと止めたり、オーディエンスを指差したりコミカルな踊りが特徴のダンスです。
例えばこんな感じ↓↓(最後の章に世界トップクラスのLock動画を貼っていますのでCheck!!)
こんな感じのダンス見たことがある人も多いはず!
Lock Danceの特徴
こちらの動画が分かりやすいのですが、体をLock(固定)する感じだったり、面白おかしいコミカルな動きや、観客を沸かせるエンタメ性が強いのがLock Danceの特徴です。
Lock Danceの呼び方
呼び方は色々あって、Lock Dance(ロックダンス)Lock(ロック)・Lockin’(ロッキン)などと言われることが多いです。
メリハリのある動きから急に『カチッ』と止まるその様子が身体をLockするように見えることからその名前が付いたとされています。
音楽のROCKではなく鍵のLockなんだよ!!
Lock Dance(ロックダンス)の歴史
この写真がLock Danceを創ったThe Lockersです。
Lock Danceの歴史は1950年代のアメリカまで遡ります。
当時はストリートダンスと呼ばれる概念は存在せず、Soul Danceと呼ばれるソウルミュージックで踊るステップ系のダンスが存在していました。(当時の人もこれがSoul Danceだという意識はなかったようです。ただSoul Musicに合わせて身体を動かすことが楽しいという時代です。この時代に絶大な支持を得たのがJames Brownでした。)
また、ダンスには流行り廃りが存在し、Soul Danceも新たなステップが流行ったり、昔のステップはダサいと認識され、ストリートダンスは常に時代と共に変化をしてきました。
Danceはカルチャーなんだ!
そのSoul Dance流れを汲んで1969年頃、ドンキャンベルという黒人ダンサーによりLock Danceが創られます。
当時ドンキャンベルはファンキーチキン (Funky Chicken)という、その名の通りニワトリを模したステップができずにメンバーにからかわれていました。腕と肘を使ってニワトリの羽を表現するみたいなダンスなのですが、どうも手足のバランスが悪くドンキャンベルは非常に下手くそだったらしいです。
しかし、キャンベルのファンキーチキンを見た仲間が『チキンのステップはできてないけど、それは新しくクールだな』と言い、その動きがきっかけでキャンベルロックという新たなダンスのジャンルが誕生します。(現在のLock Danceの原形)
そしてドンキャンベルは1971年、伝説のLockダンスチーム、The・Lockersを結成します。
The Lockersのメンバー
メンバーは、
- ドン・キャンベル(Don Campbel)
- トニー・バジル(Toni Basil)
- Mr.ペンギン(Fred Mr.Pienguin Berry)
- フルーキールーク(Fruky Luke)
- スリム・ザ・ロボット(Bill Slim Robot Williams)
- シャバドゥ(Adolfo Shabba Doo Higgins)
この6人が創設期からのメンバーと言われています。
後に、
- グレッグキャンベルロックジュニア(GREG Campbellock Jr.)
- スクービードゥー(Jimmy “Scoo B Doo” Foster)
- ウイリアムソン(Williamson)
- トニーゴーゴー(Tony Go-Go )
らが参加し、チームは徐々に大きくなっていきます。
メンバーのMr.ペンギンはダンサーの傍らコメディアンとしても活躍しており、Lockダンスのコミカル要素は彼の影響を受けています。
彼らがアメリカのTV番組『ソウル・トレイン』や『サタデーナイト・ライブ』、映画『ブレイクダンス』に出演し、瞬く間にLock Danceは知名度を上げ人気のダンスとなっていきます。
また、グラミー賞のプレゼンターを務めるなど活動領域を広げ、国境を超えた知名度を獲得し、Lock Danceは世界へと知られるようになります。
Lock Danceはブラックカルチャー発祥
Lock Danceができた当初はコミカルな要素が非常に強く、笑顔で踊るのは当然で、面白おかしい振り付け、ピエロのような衣装を身にまとってパフォーマンスをしていました。
これには深い理由があり、当時のアメリカの社会情勢が関係しています。
Lock Danceを含むストリートダンスはブラックカルチャー発祥です。1960年代のアメリカでは黒人差別が根強く残っており、彼らに自由は無く過酷な労働を強いられていました。黒人が犠牲になる社会問題が数多く勃発しており、公民権運動と呼ばれる、黒人の公民権(選挙権・被選挙権・公務員となれる権利)と自由を求めた運動やデモがたくさん起きていました。
そんな過酷な環境で生きていた黒人達が自分を表現する場として見付けたのが音楽とダンスだったのです。
Lock Danceを創ったThe LockersのメンバーのTony GoGoは笑顔で踊る理由を、
好きなダンスをする時くらい楽しみたかったから
このように語っており、この短い言葉の中に当時の黒人の苦しみが凝縮されているように感じました。数少ない自己表現の場は楽しみたい、日常を忘れてダンスをしている時は笑いたい、そんな黒人の思いからLock Danceはコミカルな側面も持ち合わせているのです。
Lock Danceに限らず、ストリートダンスはブラックカルチャーと密接な関係があるのです。
日本でLock Danceが広まった理由
日本では1970年代〜1980年代にかけてディスコが全国各地に存在していました。
しかし、そこで踊られているのはストリートダンスではなく『チャチャ』と呼ばれる社交ダンスに近いダンスだったり、音楽に合わせて身体を動かすことがメインの名も無い踊りばかりでした。
転機が訪れたのは1978年〜1980年頃の福岡県です。
福岡に世界最先端のLock Dancerが来日
今でもダンスのメッカと言われている福岡県で、日本のストリートダンスの礎が築かれる2つの出来事が起こります。
1つ目は、福岡県にアメリカで有名な音楽番組『Soul Train』の、「Something Special」というダンスユニットが福岡にやってきたのです。
今のように情報が全くなかった時代に、世界最先端のストリートダンスチームが福岡にやってきたのです。
当時の日本人からしてみたら、天地がひっくり返る程の衝撃です!
何故そんな最先端のダンサーを福岡のディスコは呼ぶことができたのか?
それは、かつて熊本県に存在した株式会社ニコニコ堂(スーパーマーケット)が深く関わっています。
ニコニコ堂の林社長の弟さんが、夜の街が大好きでディスコに莫大なお金をつぎ込んでいました。(それが原因で経営が傾いた噂もあります...笑)
その林さんが、本場アメリカのダンサーを福岡県のディスコに招待したのです。
そして、その会場でダンスを観ていたのが日本が誇る伝説のダンスチーム『BeBop Crew』リーダーのYoshibow(横田 義和)だったのです。
『BeBop Crew』は1982年に結成されて以降、未だに日本のダンスシーンを牽引する伝説のダンスチームです。(日本でBeBopCrewの影響を受けていないダンサーはいない程です)
リーダーYoshibowはこの日の出来事を後のインタビューで、
全員個性的でかっこいいダンサーでしたね。僕も元々は「スタイリスティックス」というバンドのライブを見にいったんですが、オープニングアクターとしてSomething Specialが出て「何だコイツら」だったんだけど、それ見たらもう涙出ちゃって、「スタイリスティックスはいいからもっぺんコイツら見たい!」と。で、それ見てプロを目指しました。俺はアイツらみたいになりたい、アイツらに追いつきたい追い越したい、それが元でBeBopCrewを作ったんですよ。
YOSHIBO・Lockingの神様
この出来事がきっかけで、日本で初となるストリートダンスチーム『BeBop Crew』が結成されます。(諸説ありネッシー・ギャングとする説もあります)
日本にLock Dance・ストリートダンスが広まった理由の1つ目がこれです。
The Lockersのトニーゴーゴーが移住
2つ目は、Lock Danceを創ったThe Lockersのメンバートニーゴーゴー(Tony Go-Go )が福岡県に移住したことです。
結婚を機に福岡に移住し、『BeBop Crew』リーダーのYoshibow(横田 義和)、ダンスの神様Seiji(坂見誠二)、『IMPERIAL JB’s』を立ち上げたGazilowなどに本場仕込みのダンスを教え、福岡で急速にダンスのレベルが上がっていきます。その名残が今でもあって、福岡県ではLock Danceのレベルが異常に高いですね。
福岡に『Soul Train』出身の最先端のダンサーがディスコに来ていたこと、Lock Danceのオリジネーターが福岡に移住したこと、この2つの出来事により日本にLock Danceが普及することになります。
Lock Danceを踊る有名人
AKB48
AKB48の根も葉もRumorはLock Danceの知名度向上に寄与した歌です。
あまりAKBは聞かなかったけど、これで好きになりました!
中居正広
中居くんはLock通で知られていますが、かなりお上手です。
昭和世代は中居くんのダンスで通じますね(笑)
KENZO
最後はDA PUMPのKENZOです。
彼はLock Danceの世界大会で優勝した経験もあるガチ勢で、超一流です。
Lock Danceで使われる楽曲
ISAAC HAYES/Disco Connection
Lockの鉄板の楽曲ですね。
Lockを踊らない人でも聞いたことあるはずです。(クリックしたらそのまま楽曲が流れます↓↓)
FUNKY BUREAU/CLAP YOUR HANDS TOGETHER
この楽曲もLockerなら一度は聞いたことがあるはず!
コミカルな1曲です。
Herb Alpert/North On South Street
Yoshibow氏、Seiji氏がこの楽曲で踊っていて、めちゃくちゃカッコよかったので選曲しました。
めっちゃかっこいいです。(動画はこちら)
もっと詳しく知りたい方は、下記記事を参考にしてみてください。
Lock Danceの豆知識
日本でストリートダンスが流行ったのは、『BeBop Crew』『IMPERIAL JB’s』この2つのチームの功績が非常に大きいです。
Lock Danceだけでなくストリートダンス全てに影響を与えているチームなのです。
そしてこの2つのチームは九州の福岡で活動をしていたのですが、1990年頃東京に暖簾分けし『東京BeBopCrew』というチームを創ります。
その初代リーダーはTRFのSamさんがつとめました。そこにはTRFのCHIHARUや福岡BeBopCrewやIMPERIAL JB’sでの活動もしていた佐久間氏、OZ氏、OHJI氏などもいました。
その後、1990年にフジテレビ系のダンス番組『DANCE!DANCE!DANCE!』のコーナーにてダンスチーム『MEGA-MIX』が結成され、『東京BeBopCrew』のメンバーが参加し世間的にストリートダンスが脚光をあびるようになります。(同時期にあったダンス甲子園やZOOを輩出した「DA DA LMD」もストリートダンスの知名度を上げました。)
実は当時ジャニーズの振り付けをしていたのはSamさんだったのご存知ですか?
『MEGA-MIX』やTRF結成など忙しくなり、サンチェさんという方に引き継ぐのですが、サンチェさんも『MEGA-MIX』のメンバーで、当然のように「東京BeBopCrew」の流れを引き継いでいます。(ジャニーズ好きの方はサンチェさんをご存知の方も多いはず。鬼教官で有名で、タッキーさえもガクブルしちゃう存在です)
だからLockの振り付けが多く、中居くんがよく披露するのもこの為だと言われています。
これは貴重な話ですね。
— ダンスの歴史書 (@dancehistory731) January 10, 2022
当時のMegaMixやTRFが忙しくなってサンチェさんにバトンタッチしたのですね^ ^ https://t.co/eBcINOGEVg
後にダンスユニットを構想していた小室哲哉氏とエイベックスが『MEGA-MIX』メンバーを中心にTRFを結成し、ダンスが一気にお茶の間に広がることになります。
そしてTRF→MAX→安室奈美恵→DA PUMPのようなアーティストの活躍もあり今のストリートダンスシーンができているのです。
テレビで活躍している有名人もストリートダンスカルチャーに影響を受けていているんだよ!
Lock Danceの難しさ
Lock DanceはHipHop系のDanceとは違って、ある程度型やステップが決まっていて、振りによる自由度が少し制限されています。
例えばこの画像のように、似たポージングが多く個性を出しにくいジャンルなのです。
もっと専門的に言うと、似たようなステップ、ポージングが多いので個人差が生まれにくい=個性が出にくいジャンルのダンスです。
そのため、踊っている人のレベル感がすぐに分かってしまうジャンルでもあります。
例えば、HipHopのような型に捉われず、自由度の高い振り付けのダンスは新鮮に観えて人を飽きさせない効果を持っています。
毎度新しい振りやステップを取り入れさえすれば、それなりに見栄えのあるダンスに仕上がります。
一方でLock Danceは、型にはまった振りが多いので新しさはありません。
型にはまったシンプルな動きで上手いと魅せるスキルが必要となります。(←これが難しい...)
従って、何年踊ろうが何歳になろうが工夫の余地が残されており『満足のいく踊り』ができないのがこのダンスの特徴であり、難しさです。
どんなことだってシンプルで魅せるのが1番難しいものですよね。
実際にLock Danceを動画で見てみる
最後に、実際に世界最高レベルのLock Danceをご覧いただきたいと思います。
この動画は、Lock DanceのオリジネーターThe LockersのTony GoGoとその息子のGoGoBrothersのショーケースです。
間違いなく世界トップレベルで、素人の方が見ても感動するレベルです。
また、Danceは音楽と密接に関係しており『音の取り方』が非常に勉強になるショーです。
ここでは詳しく解説はしませんが簡単に言うと、ビートではなく音楽で踊っています。
『その人が踊ったように音楽が聴こえる』現象とでも言いましょうか、音楽とダンスがマッチしている感じです。
このショーは韓国で行われたのですが、音とダンスがマッチするところでは歓声が上がり分かりやすくなっています。
ダンスは国も言語も超越する素晴らしいカルチャーなのです。
是非、世界最高峰のLock Danceをお楽しみください。
それでは今回はこの辺りで、See you next time!!