今回はダンスバトルについて基本的なルールと、最低限押さえておきたいポイントを解説します。
パリ五輪で正式種目となったブレイクダンスですが『ダンスバトルってどうやって勝敗を決めているのか分からない』という方も多いはずです。
パリ五輪で楽しくブレイクダンスを観るためにも、読み進めていただければ嬉しいです。
ストリートスポーツはダンス以外にも色々あって、東京五輪で素晴らしい活躍をしたスケボーや、ハーフパイプ、BMXなんかが有名です。
これらの競技は、いかに難易度の高い技を美しくキメることができるのかというところが採点の1番重要なポイントだったりします。
しかしダンスバトルはスキルも大事ですが、音楽との調和が最も重要視されます。
これはストリートダンスが音楽と共に成長してきた歴史が関係しており、技とダンスを混同しないためにも理解しておかなければならないポイントです。
今回はこの辺りも踏まえて、ダンスバトルの基本的なルールやダンスバトルの見どころについて解説するよ!!
ダンスバトルの歴史
まずはダンスバトルの歴史について軽く解説します。
ダンスバトルの発祥はBreakin'
ダンスバトルは1970年代のアメリカニューヨークのBreakin'が発祥です。
1973年、暴力やドラッグが蔓延し治安の悪かったニューヨークで、アフリカバンバータが「Zulu Nation」と呼ばれる黒人若者の組織を結成します。
「Zulu Nation」はラップ・ダンス・DJ・グラフィティなどの黒人創造文化をHipHopと名付け、喧嘩や暴力ではなくダンスで白黒つけようと若者に働きかけました。
その結果、喧嘩や暴力は徐々に減っていき、ブレイクダンスでバトルを行い勝敗を決める文化が生まれました。
上記のことからBreakin'だけがバトルカルチャーの要素を色濃く受けています。
Breakin'から他のジャンルに波及した
Breakin'は発祥の1970年代からバトルカルチャーとして成長し、若者に競争心を与え新しい技術も数多く生まれました。
新技が出てきたらこぞって真似をしたり、すごい技を誰よりも早くできるよう競うように練習をしていました。
一方で他のLock、Pop、HipHop、Houseは、バトルとして確立されたのはかなり最近です。
ダンスバトル史
- 日本でOld School Nightと呼ばれるのダンスバトルが始まったのは1999年(最初はBreakin'のみ)
- O.S.NのLock、Popのバトルが始まったのが翌2000年
- 日本でThe Gameと呼ばれるHipHopとHouseのダンスバトルが始まったのが2003年
- 世界ではUK B-Boy ChampionshipsでPopバトルが始まったのが2004年、Lockバトルは2005年
Breakin'以外のダンスについては2000年代に入ってバトルが活性化したように思います。
理由としては、いわゆるこれらの『立ち踊り』はバトルというよりかはShowの文化で成長してきており、Breakin'からバトル要素が波及したに過ぎないため、遅咲きになったと考えています。
いずれにしても、現在では全てのジャンルでダンスバトルが繰り広げられています。
ダンスバトルの基本的なルール
1ON1やチーム戦など様々なバトル形態が存在しますが、基本的には優劣を決める戦いで、優れていた方が勝ち、劣っていた方が負けというシンプルなルールです。
表面的には非常にシンプルですが、中身を知るとびっくりすることも多いです。
全てが即興で行われる
ダンスバトルは全て即興で行われます。
あらかじめ流れる音楽も知らされなければ、振り付けのようなものも存在しません。
バトル会場の雰囲気やDJの気分でセレクトした音楽に対して、即興で踊ります。
そのためダンサーの本当の実力が問われますし、ラッキーで勝ち上がるなんてことは有り得ません。
また、1つのバトルで3ムーブを披露することが一般的となっています。(3回交互に踊る)
3回踊る=3曲踊ることになり、幅広い音楽の知識も必要になります。
これがダンスバトルの醍醐味であり、ダンサーを悩ます難しいところでもあります。
ジャッジが手を上げて判断を下す
上の写真のように、ジャッジが3人ないしは5人いて基本的には奇数で票が割れないような形で組まれます。(オーディエンスを1票とカウントするバトルもあります)
ダンサーが3ムーブ踊った後に、音楽と調和して踊っていた方・ジャッジの心に響いた方に手を挙げ、勝敗を決めます。
ここで問題視されるのが、ジャッジの公平性です。
過去にも疑惑付きのジャッジがあったり、自国の選手や友人を贔屓にしたジャッジがありました。
最近ではオリンピック種目になったので、こういった個人の主観をメインにしたジャッジは減少してきています。
後述しますが、最近ではダンスバトルの明確な採点基準も導入され、クリアなジャッジが広がっています。
技術よりも音楽と調和しているか
ダンスバトルで最も重要視されているのが、技の難易度ではなく音楽との調和です。
これは他のストリートスポーツと最も違っている部分で、難易度の高い技ができる=評価される訳ではないのです。
これはストリートダンスが音楽と共に成長してきた歴史背景が関わっていて、ダンスバトルは音楽と一体でなければならないからです。
従って難易度の高い技ができることが評価と直結する訳では無く、技とダンスと音楽全てが調和して初めて評価されます。
これがダンスバトルの難しいところで、ダンサーは音楽も勉強する必要があり、DJ兼ダンサーって人が多い理由でもあります。
ダンスバトルの採点基準は?
ダンスバトルの採点基準は近年明確になりつつあります。
今まではジャッジの心に響いた方に手を上げるというもので、個人の主観がメインでした。
その結果、場が荒れたり、自国を優先したジャッジをする人が現れ、公平性の面で疑問視されることも多々ありました。
それらの諸問題を解決するために世界一のダンスバトルRedBull BC Oneでは下記8つの採点基準を設けています。
ジャッジの評価軸
- 音楽性
- 基礎
- ムーブの難易度
- キャラクター/個性
- スタイル
- 精度
- オリジナリティ/創造性
- ラウンドの構成
また、公益社団法人日本ダンススポーツ連盟ではかなり事細かな採点基準を用いており透明性の確保にも努めています。
以下、BREAKING JUDGE SYSTEM IN DANCESPORTより引用
評価基準 | 評価項目 | 採点 |
①Technique(技術) | Form(形) Balance(バランス) Dynamics(迫力) Lightness(敏速さ) Difficulties(難しさ/難易度) Precision(精度) | 0.00~10.00 |
② Expression(表現) | Confidence(自信) Spontanity(自然さ) Personality/Caracter(個性) Musicality(音楽性) Flavor(Domination)(空間支配・フレイバー) | 0.00~10.00 |
③ Constitution(構成/完成度) | Originality / Creativity(創造力) Complexity(複雑さ) Variety(多様性) Cleaness(クリーンさ) Perfection(完成度) | 0.00~10.00 |
④ Battle(バトル) (レスポンス・戦術性) | Tactics(戦術) Response(反応) | 0.00~10.00 |
加点 | 加点基準 | 内容 |
+1.00 +2.00 +3.00 | Surprise | その曲と空間において、意表をつくような特に効果的な表現技があった場合に加点する。 Constitution(構成/完成度)のPCS項目とともに高く評価しても良い。 Constitution(構成/完成度)に限らず、常識を超えるスピード、回転量、高難度、大きな効果を生む組み合わせ(トランジション)などで加点される。 |
減点 | 減点基準 | 内容 |
-1.00 | Repeat | 自分の特徴的な「技」を、その対戦中に繰り返して使うこと。 |
-1.00 -2.00 -3.00 | Crush | 崩れた、バランスを失った、滑ったなど観客から見てわかる悪影響の程度で判定される。 |
-1.00 | Misbehavior | 全体的な動きとは別に、スポーツマンシップに反する不適切な表現があった場合。 例:相手を手で押す・手のジェスチャー及び言葉で罵倒するなど。 |
Loss | Lost | 相手に暴力を振るう、公序良俗に反するジェスチャーなどして、スポーツとして認められない行為があった場合や、怪我などにより演技続行不可能と判断された場合は、Lostとなり全てのPCSの点、加減点をゼロにしてその対戦は終了となる。 |
加点・減点ポイントも明確に決められており、フィギュアスケートに近いような採点方式です。
どのスポーツもそうですが、採点は答えの無い問題なので非常に難しいです。
ダンスバトルではこの採点方式が用いられていますが、これから更に進化してくことと思います。
面白いダンスバトルを2つ紹介
個人的に面白いと思ったダンスバトルを2つ紹介します。
【アニソン2on2ダンスバトル】あきばっか~のvol.8
ダンスバトルに新たな扉を開いてくれた、あきばっかーのを紹介します。
その中で最もバズったダンスバトルです。
セカンドバトルは必見です、オタク最高です(笑)
1ムーブづつの採点するバトル
Red Bull BC One World Final 2014年のダンスバトルをチョイスしました。この大会では珍しいジャッジシステムが導入されました。
通常は3ムーブ踊った後にジャッジが手を挙げるというシステムなのですが、今回のバトルでは1ムーブ終わるごとにそのムーブに対してジャッジが下され、3ムーブ中2ムーブ優った方が勝ちという新たなシステムでした。
見ていただければ分かりやすいと思います。
ただ賛否が多すぎて1年でこのシステムは終了してしまいました。
以上が、ダンスバトルについてのまとめでした。
パリオリンピックの見どころは技と音楽の調和です。ぜひ聞き耳を立ててご覧ください。
それではこの辺で、See you next time!!