長年課題とされてきた『ダンスで飯を食っていくにはどうしたらいいのか問題』についてずっと頭を悩ませており、少しだけアウトプットできそうなので考えをまとめてみました。
日本だけで600万人の競技人口がいるのにプロダンサーが食えない状況を何とかしたい🤔
野球の競技人口は380万人、サッカーは100万人弱…
もう少しダンスに光を当てて欲しい。
エンタメは日本を救うと思う🙌競技人口600万人、10歳未満も2割:日本経済新聞 https://t.co/NDjgWa4JFB
— ダンスの歴史書 (@dancehistory731) August 25, 2022
このツイートのようにダンス人口は年々増えています。
しかしダンスの競技人口は増えているのに、プロのダンサーが食えないという現実があり、ダンスマニアの僕としてはこの状況をどうにか打破したいと色々考えてみました。
結論をサクッとお伝えすると、新たなキャッシュポイントを創るしかないです!!
今回は、ダンサーが安心して生計を立てるにはどうしたらいいか僕なりの意見をまとめています。
※前段ダンサーの状況などを記載しています。結論を知りたい方はこちらから読んでください。
ダンサーの現状
本題に行く前にダンサーの現状について整理してみました。
ダンサーの年収
Indeedの調査によるとダンサーの平均年収は464万円となっています。引用:ダンサーになるには
(※日本人の平均年収は430万円程)
非常に面白いのが年収には地域差があり、福岡県で約686万円、東京都で約615万円、大阪府で約569万円となっています。
ダンス通なら理解できると思いますが、福岡県が1位の理由はBe Bop CrewやIMPERIAL JB’s を始めとする日本ストリートダンスのオリジネーターが数多く住んでいるからです。
福岡は日本のストリートダンス発祥の地です。
今でも一流ダンサーが数多く住んでおり、日本のダンスのメッカと呼ばれています。
日本の平均年収が430万円程なので、ダンサーの平均年収はそこそこだよね〜
と思ったのですが、よく考えるともっと稼がなきゃいけない職業です。
何故ならダンサーの殆どが個人事業主や自営です。
企業に雇われている人よりも税制面での優遇があるかもしれませんが、福利厚生・有休・賞与・退職金などは無く、年金も国民年金だけの場合が多いです。
更にケガをして稼働できないと収入がゼロになってしまう恐れもあります。
リスクが大きいのでダンサーとして食べていく場合は、平均的な年収の1.5倍~2倍は稼いでおかないとトントンにはならないように思います。
ギャラの相場
一般的には1ステ数千円~3万円程が相場と言われています。
どんなに上手な人でも1ステ10万が天井で、小春さんやKento Moriのような1ステ数百万円みたいなダンサーは稀です。
また、テーマパークに雇われているダンサーは月給制で安定していると言われていますが、基本的には契約社員だったり業務委託が多く、昨今のコロナの影響で仕事が無くなったダンサーも多いです。
基本的にはダンサーと他の仕事を掛け持ちし、生計を立てている人が多いのが現状です。
ダンサーのキャッシュポイントを考える(どうやって稼いでいる?)
現在のダンサーのキャッシュポイント(稼いでいるポイント)を考えてみました。
大きく分けて⑥つあり、それぞれどのようなものか考えてみます。
①インストラクター
ダンサーが稼ぐ最もメジャーな方法がインストラクターです。
昨今のダンス人口の増加も相まって、インストラクターとして稼ぐダンサーは増えています。
また、オンラインでレッスンをすることも可能で都心部に限らず、地方のダンサーも稼ぎやすくなっています。
➁自身のパフォーマンスによる収入
この項目は自分のダンスパフォーマンスによる対価と定義してみました。
内訳
- Showやイベントの出演料
- ジャッジやバトルの賞金
- バックダンサーや有名人のツアーダンサー
- テーマパークのダンサー
自身のダンスパフォーマンスによる対価で収入を得る場合はおおよそこんな感じだと思います。
この辺りから狭き門となり、全体の1割以下の水準になってきます。
③振付師・演出家
③以降は更に難易度が増し、ほんの一握りの人が活躍できるフィールドです。
CMや映画などの振り付け、演出家として活躍するパターンで、ダンスのスキル+クリエイティブスキルが必要となります。
ジャニーズに振り付け指導していたSeijiさん、座頭市で活躍したHIDEBOHさんなんかがイメージしやすいね!!
④事務所や劇団に所属する
ダンサーのIsoppさんとか黄帝心仙人は吉本興業に所属していますし、FISHBOYはナベプロ所属です。
劇団四季やシルクドソレイユに在籍している人もこの分類に当てはまります。
s**t kingzとかEXILEのパフォーマーもこれに近いように思います。
収入的にも桁が一つ変わる世界になります。
⑤インフルエンサーになる
インフルエンサーになるためには、ダンスの技術も必要ですがマーケティング能力が最も重要です。
裏を返せばマーケティング能力があれば、そこそこのダンススキルでも収入を上げることが可能です。
インフルエンスも持っているダンサー
- FLAVAJAPAN - ブレイクダンス TV - 登録者5.5万人 再生回数3200万回以上
- 倉永美沙 バレエダンサー Instagramのフォロワー17万人以上
- yurinasia ダンサー Instagramのフォロワー8万人以上
もちろん皆さんダンスがお上手ですが、マーケティングもお上手です。
インフルエンスを持つと企業案件からの収入や、クローズドなコミュニティでサロン運営も可能なので、収入の軸が多くなります。
⑥スポンサー収入を得る
おそらくこの⑥の領域のパイオニアはB-boy Taisukeでしょう。
彼はRedBull BC One All Starsに選抜され日本人として初めてスポンサーを背負ったダンサーです。
その他にもFREEGUN / PUMA / O・Z Racing / MAKAVELICの看板を背負ってダンスをしています。
現在では、Shigekix、AmiもRed Bullのスポンサー付きで活動をしています。
ここがプロダンサーの目指す究極の到達点のように思います。
他のスポーツと同じで、人並外れた努力をし、人間の限界に挑戦するアスリートに対して、スポンサードするのが好ましい状況だと言えます。
ダンサーが食っていくには、ダンサーの想いに共感し、お金を出してくれるスポンサーを増やすのが1つの方法です。
ダンサーが食えない理由
前段が長くなりましたが、ダンサーが食えない理由を考えてみます。
食えない理由を解説した後に、どうやっただダンスで食べていけるかについての打ち手を考えてみます。
キャッシュポイントにリスクがある
体を壊したりケガをしたりしたら収入が途絶えてしまいますが、これはダンスに限らず殆どのアスリートに該当することなので、ダンス界特有の問題ではありません。
ただ、ダンサーが大きく稼げるイベントやライブにおいて、『チケットが売れない』『コロナでダメになった』みたいな収入減には対策が打てるように思います。
もっと言うと、チケット収入だけに依存したビジネスモデルにはかなりのリスクがあり、それがダンサーが稼げない一因になっているということです。
この辺りの問題についてはプロセスエコノミーで解決できると思うので後述します。
資金が流れにくい構造
日本の金融資産は1700兆円と言われており、そのうち1000兆円を60歳以上の高齢者が保有しています。(約6割)
40代・50代の金融資産は573億円で、日本の金融資産の93%以上が40代の人が保有している計算です。引用:内閣府
言うまでもなく10代・20代の殆どのダンサーは資金的な余裕が無く、誰かに依存しなければいけない状況です。
また企業の目線で考えると、スポンサーや投資をする対象は『企業の商品を買ってくれる人』がメインです。
日本の場合、資産の分布・人口の分布を鑑みても、高齢者に投資した方がリターンが見込めるので、若年層に投資されにくい傾向にあります。
ダンス界に限らずストリートスポーツはこういった状況に陥っています。
だからこそ目先のお金よりも、若者を応援したいという心意気を持った企業にスポンサーをしてもらう必要があります。
ダンスで食っていくならキャッシュポイントを増やす
ここからが本題で、ダンスで食っていくために必要なことを解説します。
スポンサーを増やす
ここは非常に難易度が高いですが、スポンサーを増やすと食っていきやすいです。
オリンピックのアスリートもこのような形が多いです。
スポンサーを獲得し活躍しているB-boy Taisukeのインタビュー記事がありました↓↓
初めに行ったのはスポンサー探しです。
アスリートにはスポンサーがついていてダンサーにはついていないという現状を変えていきたいとの思いから、頭を下げに何度も企業へ足を運びました。
体を鍛えてハードなトレーニングを行うことや競い合う文化を持っているのはアスリートもダンサーも同じです。
しかしながら、ダンスはカルチャーでありスポーツではありません。この思いを理解し、スポンサーとして名乗りを上げてくれた企業の方々との出会いから、"BBOYにスポンサーが付いている"という前例をようやく作ることができました。
https://vantan.jp/interview/detail.php?e_id=5766
Taisukeも最初はスポンサー探しに苦戦していたようで、泥臭いことをコツコツとやってきた様子が伺えます。
何事も一朝一夕には成らず、努力の末に手に入れることを教えてくれます。
個人的にはD.LEAGUEに出演しているダンサーの皆さんには、スポンサーだけで食っていける状態を目指してほしいと思います。
プロセスエコノミー
ここが一番可能性のある分野で、ダンサーの活動のプロセスをマネタイズするということです。(プロセスを売ってお金を稼ぐこと)
キングコングの西野さんが言われているのですが、
ダンスを含め舞台系のイベント収入は『チケット代×人数』で決まってしまいそれ以上稼ぐことができない。(天井がある)
しかもチケットが売れない、コロナで中止になってしまったら0円になってしまうリスクがある。
従って、イベントを創っていく過程も販売してファンを増やし、収入の軸を増やすことが重要だ。
上記のように話されています。
アーティストの舞台裏をドキュメントしたDVDとかが販売されたりしていましたが、あれに近いイメージです。
舞台やライブを創り上げていく過程を知りたい人もいるので、本番を観に来れない人にも買ってもらおうという作戦です。
もっとマニアックな例で考えてみると、Be Bop Crewの舞台裏とか凄く気になりますよね。
お金を払ってでも知りたい内容
- どういう基準で選曲してるの?
- 誰が曲を選んでいるの?
- 誰がフリを考えているの?
- 全体練習はどんな感じなの?
- 本番前にどれくらい練習しているの?
- フリ合わせとかどうしてるの?
- フリの変更はあるの?
上記の内容はダンサーにとって価値のある事で、お金を払ってでもしりたい情報だったりします。
この辺りを構築し稼ぐことがダンサーの収入増に繋がると考えています。
しかもここでのダンサーのスキルはそこまで高くなくていいと思っています。(超一流じゃなくてOK)
ダンスのスキルが無い人でも、同じレベル感の人の助けになるからです。
プロセスエコノミーがダンサーの新たな収入源となり食っていく手助けをすると考えています。
NFT
NFTも参入障壁が低く、誰でも収入源にすることが可能です。
web3、NFT??横文字は分かんな~い....
と抵抗がある方も多いですが、新しいマネタイズ方法として注目されているのも事実です。
Houseで有名なMiyuさんも取り組んでいます。
──NFTで作品を発表することになった経緯を教えてください。
Miyu:ほかのエンタメ業界と同じく、ダンス業界でもコロナ禍の影響でダンサーたちのイベントや活動の場所が減ってしまうような状況になりました。私自身も実際に人前に出る仕事が減りましたし、周りのダンサーのそういった状況を知っていたこともあり、ダンサーにとって新しいビジネス、マネタイズの可能性になるのであればと、今回の企画に関わらせて頂きました。
NFTで「ダンス」は何が変わる? 世界初NFTダンスアート作品を発表したダンサー、Miyuさんに聞いてみた
ダンサーの新しい収入源になることは間違いなく、これからますます伸びていく産業です。
抵抗があるかもしれませんが、食っていくためには重要な選択肢なのでトライすることをお勧めします。
以上がダンスで食っていくにはどうすればいいかの解説でした。
『食えない、稼げない』と嘆いていても何も変わらないので、これをきっかけに何か始めてみるのもいいかもしれません。
ダンス市場を一緒に盛り上げていきましょう。
それでは、See you next time!!